【天の雷・地の咆哮】
「珍しいじゃないか。ニュクスのほうから俺を訪ねてくるなんて」
泣きはらした目をなんとか冷やしておさえ、その日の昼を過ぎた頃、ニュクスはロカの元を訪れた。
さりげなさく現れたようではあったが、精力的に仕事をしているロカのわずかな休憩の時を見計らってきたのだろう。
それは、ちょうど一つの事案を片付けたロカが、休憩を挟もうとしていた時刻であった。
侍女に持たせた茶菓子を受け取ると、ニュクスはロカの前に差し出した。
「ずいぶんお忙しそうなので、少しはお休みをとった方がいいと思ってきたのです。
これは私の実家から送られてきたものです。
お口に合うかわかりませんが、甘いものを食べると疲れが取れますから。どうぞ」
そつのない動きで、ニュクスはロカの前に次々と菓子を並べ始めた。
色とりどりの小さなかわいらしい菓子たちが、食べて欲しいとばかりに、
つやつやと存在を主張している。
「なんだ、こんな華やかな色の菓子は初めて見るぞ」
「我が家に伝わる秘伝の製法があるのです。香りもそれぞれ違うのですよ」
「ほぉ~。それは凄いな!うまそうだ。一緒に食べるか!」