【天の雷・地の咆哮】
ニュクスはロカを射抜くような鋭い視線で見つめると、うなされるように言葉を重ねた。
「ロカ。あなたはいいように利用されているのではないのですか?
彼女のお腹の子は、あなたのではなく、本当は別の男の子なのでは?
ウェスタの巫女を、ユピテロカ王子が無理やり我が物にしたと噂されていると聞きました。
しかし実際は、あのしたたかな女に皆そろって騙されているのではありませんか?
実家に帰ってしまっては、本当の相手と結婚しなくてはならないから、
子どもを孕んだのをいいことに、皆を欺いて城にとどまり・・・」
「もういいと言っている」
「でも、これは次代の王家に関わる重大な問題で!」
「黙れ!」
それまで優しかったロカの目が、急に支配者のそれに変貌した。
他人を威圧する、王者の蒼い瞳。
「いいか、二度とその話をするな!
特に、ヴェローナの前では決してするな!いいな!!」
地が割れるほどのロカの怒りを全身に受けて、
ニュクスは心の奥底までが凍りついたような気がした。