【天の雷・地の咆哮】
ホーエンは、しばしロカを見やった後、無言のまま一礼して部屋を出た。
後を追うように、ニュクスが軽く頭を下げ、ロカに背を向けた瞬間。
「ニュクス」
ロカの、まるでそよ風のような小さな囁き声が、ニュクスを引きとめた。
呼び止めておきながら、ロカは、後ろを振り返ったニュクスに苦い顔をした。
まるで、気づかれなければ良かったというように。
「ロカ?」
「いや。なんでもない」
歯切れの悪いロカの態度が、余計に気にかかる。
「どうかしましたか?」
「・・お前、最近変わったな」
「え!?」
「ヴェローナから、何か聞いたのか?」
ロカの言いたいことをぼんやりと理解して、ニュクスは首を横に振った。
「子どもの父親については、何も聞いてはおりません。
あなたとの関係についても」