One Love


じわじわと口の中に血の味が広がった。

唇を噛みしめてたから切れたんだ。




「湊……おいで?」



涼が優しくほほ笑んだ。


……それはつまり、抱きついていいってこと?



『……』



だけど考えるより体が先に涼の胸の中に行った。


私は涼の胸を借りて無我夢中で泣いた。



『うわーん…。うっ……ひっく……うわーん』




涼の胸は温かい。

涼の胸は広い。



私は小さい子のように泣き続けた。











< 83 / 96 >

この作品をシェア

pagetop