霧の中の「BOY MEET GIRL」【中編】
ピロロロロ......
「ん?」
金曜日の夜中に、電話が鳴った。
画面を見ると、樹雄からだった。
「もしもし?」
『おう、向平。俺だけど』
「なんだよ樹雄。眠いんだけど」
『まあまあ。そう言うなって。いい情報が入ったから教えてやろうと思ったのに』
「お前にはタイミングを合わせるという優しさはないのかな」
それより......いい情報?
もしかして曲のこと、だろうか?
『まあ聞け。あの曲、オレらが歌ったって言ったよな?』
「おう。学祭のだろ?」
『そのCDを、当時のクラスの奴らに配ったんだよ。ノリでな』
「CDって...」
『ああ、本場のヤツだ』
...そうだ。
言われてみれば確かにそんなこともあった。
確か3年の時、最後だからってCDを焼き増しして皆に配ったんだ。
...今思えば、調子に乗りすぎだっつうの、俺ら。
「ってことは...」
『そうだ。お前が会った女っていうのは、もしかして3年の時同じクラスだった奴なんじゃねーのか?』
「...」
『それか、洋楽マニアかもしんねえけどよ』
元クラスメイト?
あの女の顔を思い出してみる。
...うーん、いたと言われればいたような、いなかったと言われればいなかったような。
記憶っつうもんは曖昧すぎて困る。
『卒業アルバム見ればわかるんじゃね?顔、覚えてんだろ?』
そうか!
そうだ、そういうテがあった。
「さっすが樹雄。じゃあ見てくるよ。分かったら即電話する」
『お前にもタイミングを合わせるという優しさはないのか』
「まあそんなもんだよ」
電話を切る。
...よし、たしかアルバムはどっかの棚にしまっておいたはず。