Imaginary,5476
「 残念 」
ちっとも残念がっていない
声で、青年は言った 。
「 君は事実上親に捨てられ
たんだよ 。気分は ? 」
… 。
仁花は側にあった人形を投
げつけた 。そうでもしない
と泣き出してしまいそうだ
った 。
「 良い訳ないじゃん !気分
最悪だよ !貴方親に捨てら
れたことあるんですか!?ね
え ! 」
いや、まだ自分も捨てられ
た訳ではない、筈 。
で も 。
捨てられるって、こんな気
持ちになるもの ?
普通、絶望を感じるんじゃ
ないの ?
仁花は心の何処かで何かが
踊っているような気分だっ
た 。
「 まるで…嬉しいみたいな
」
青年は笑った 。
「 You see ! 」
パチン !
青年は仁花の前に屈み込む
。そして、弾いた指の間か
ら、一本の薔薇を取り出し
た 。
「 僕は魔術師、フェンネル
だ 。宜しく、シンデレラ 」
それは綺麗に、微笑んだ 。