Imaginary,5476
仁花達はまた先程まで居た
屋敷に戻ってきた 。
外側から改めて見ると、そ
れは有り得ない広さを持っ
ていることを知る 。
広大な庭には、噴水があっ
て、花は咲いて、暗闇はラ
イトで照らされていた 。
「 さ、二人共 」
少年が先に入って、仁花は
その後でおずおずと入って
いった 。
「 … 」
何故、電車が脱線したのだ
ろう 。お陰で助かったのだ
が 。
部屋──談話室 ?──に入
った時には、机に温かい紅
茶が置いてあった 。
「 では、話でも始めようか
」
少年は頷いたのかは良く判
らなかったけれど、仁花の
目を すっ、 と見つめた 。
──挨拶してない 。
「 あ、私は茉野仁花と言い
ます 。先程は何かありがと
うございました 」
少年は微笑んだ 。
「 じゃあ此方は謝らなけれ
ばいけないな 。僕は鈴守 。
宜しくね 」
それは苗字なのか、偽名な
のか、よく判らなかった 。
でも別にそんなことはどう
も構わなかった 。
「 結果的にはこの子は助か
ったんだから良いんじゃな
いですかね、鈴 」
やっぱりアリスは、聞き間
違いなのかも知れない 。