Imaginary,5476
暗い道路 。
ポツリポツリと立つ灯りは
ただ電灯の下を浮かばせる
くらいの柔らかなもの 。
雨はまだ降っていたけれど
、鈴守は傘も差さずにこの
冬空の下 、立ち尽くしてい
た 。
「 ア───リス 」
ふと少女の声に顔を上げる
と 、鈴守と同じく傘を差さ
ず真っ白な服を身に纏って
立っている少女が居た 。
「 白ウサギは白い服なんて
ベタ過ぎだよ ? 」
「 あ 。アリス酷いんだぁ 。
そんなこと言った人君が初
めてかも ! 」
すねていた口調がどんどん
明るく変わり 、最後は輝く
ばかりの笑顔で彼女は言葉
を締めた 。
「 シンデレラ 、見付けたん
でしょ ?だったら迎えに行
かなきゃ 。ねぇ、案内して
よ 」
肩にすっと乗せられた手を
横目で眺めて 、鈴守は黙っ
ていた 。
「 …ねーってばぁ 」
「 シンデレラは大切な存在
なんだ 」
「 じゃあ尚更── 」
「 君は 、関わらなくて良い
」
少女の目の色が 、
黒 から 獰猛な兎の色──
赤 に変わった 。