Imaginary,5476

 「 …げんなり 」

 普通 、げんなりなんて口に
 出して言う言葉じゃないは
 ずだ 。

 なのに 、仁花は教室の隅で
 頬杖を突きながら溜め息を
 吐いた 。


 何と 、あの騒動があった時
 刻は午前四時頃 。
 仁花達はあの後何事も無か
 ったように学校に行くこと
 になったのだ 。




 「 おっかしいでしょ !?だ
 って私誘拐されてる身なん
 ですけど !? 」

 「 だから本当は親なんて居
 ないんだってば 。ね ? 」

 「 ね 、じゃな───い ! 」

 …と 、このまま学校に来た
 訳だが 、やっぱりいつも通
 りの時の流れに仁花は首を
 傾げた 。

 ──親なんて 、居ないって
 何よ 、居ないって 。

 「 お弁当まで用意してた誘
 拐犯って… 」

 フェンネルは一人で大丈夫
 なのだろうか 。あんな大き
 い怪我をして 。

 「 キスされた… 」

 …


 自分で言って恥ずかしくな
 ってみる 。まぁ外国人なの
 だからキスは挨拶だとでも
 言うのだろう 。

 「 そうそう 、挨拶挨拶 」

 ぺちん 、と右頬を叩いて 、
 行き場を失ったその右手で
 頬杖をつき直した 。




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