Imaginary,5476
「 どうぞ 」
「 あ、どう── 」
も 。とは続かなかった。
パチン !
「 ! 」
いきなりの軽快なその音に
仁花が肩を揺らすと、次の
瞬間、
靴が消えていた 。
「 えっ… 」
その人が仁花の腕を掴んだ
時、
信号は青に変わり、車が動
き出す 。
それは勿論、事故が起こる
と思った。
けれど、仁花達の存在を一
切無視して世界は動いてい
る 。
「 な‥ !何で!? 」
というか 靴 。
目の前に居る…青年は、そ
れはもう綺麗で、そう、喩
えるなら…
硝子細工 。
否、みとれている場合では
無くて 。
この思春期馬鹿 !
「 あの…私の靴は 」
青年はニコ、と綺麗に笑っ
た 。
否、だからみとれている場
合では無くて 。
「 君を捜して居た 」
… 。
この現実世界には有り得な
い台詞を吐く青年が目の前
に居たのだった。