Imaginary,5476
「 サムライ ? 」
「 シンデレラ 。 」
いつの間に気を失っていた
のか、仁花はベッドに横た
わっていた 。
「 あぁ…そうそう 。じゃな
くて靴 ! 」
「 自分の安否よりまず靴の
有無 ? 」
「 靴返して 。あと私も帰し
て 。 」
「 上手な掛詞 。合コンとか
で使って良いかな ? 」
相手出来そうにない 。少な
からず仁花はそう感じた 。
「 何でもするから靴返して
下さい 」
何で靴に此処まで執着する
のか、仁花にも良く判らな
かった。
心の片隅では「 靴なんて放
って逃げろ 」と言っている
のに、大半では「 靴が無け
れば私じゃない 」だなんて
思っている 。
「 …何でも ? 」
嫌な予感 。
「 …何でも 。 」
「 じゃあ出掛けよう 」
カチャ 。
青年は細い首から今まで見
えもしなかった首輪を外し
た 。
──この人そういう趣味の
人 ?…なんて 。
誘拐された身であるのに、
自分が危険だなんて不思議
と思わなかった 。