Imaginary,5476

 また仁花達は部屋に戻って
 きた 。

 シャンデリア、分厚いカー
 テン、人形 。

 細々とした装飾で溢れてい
 るその部屋は、仁花にとっ
 てそこまで居心地の悪い場
 所ではなかった 。


 「 疲れた… 」

 精神的に、だ 。

 「 もしもし ?茉野さんのお
 宅ですか ? 」

 「 ちょっと何── ! 」

 電話してんだよ 。

 「 娘は預かりました 。身代
 金を払わなければ、殺す 」



 殺 す !?


 青年の手がボタンを押して
 、親の戸惑いがすぐ其処か
 ら部屋中に響きわたる 。

 声を聞かせてほしいがこの
 後来るだろうと思った 。だ
 って、テレビではいつもそ
 うだ 。

 なのに、父親はさらりと衝
 撃ワードを発した 。



 「 ──…払えない 」





 は ?


 「 は、え!?ちょ、お父さん
  ! 」

 そんな、金額も聞かないで
 !?

 「 仁花 ?其処に居るの ! 」

 「 ちょっとお母さん !この
 人多分本気だよ!?殺されち
 ゃうじゃない ! 」



 謝る声 。
 いや、謝る謝らないではな
 く !

 電話は、


 切れた 。



< 9 / 48 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop