聖夜の約束
そんな高杉先生と初めて言葉を交したのは、バイト中の事だった。
『いらっしゃいませ。お一人……様、ですか?』
思わず声が揺らいだのは、校内の話題をかっ拐っているあの人が、夕食時のピークを過ぎたファミレスに一人で来たから。
ここは、学校からもアパートからも遠くて、誰にも会わないだろうって思って選んだのに。
『こんばんは。確か、3年2組の板橋華南子さんだよね? こんなところでバイトしてるんだ』
……こんなところ、って。
ファミレスでバイトして何が悪いのよ。
『せ、先生こそ、一人でファミレスですか?』
『面倒な時はいつもだよ』
初めての会話なのに、何故か先生はあたしのクラスも名前も知っていて。
あたしはそんなことよりも、渦中のこの人が『独り』でこんなところに現れたことの方が気になっていた。
友達も、恋人も居そうに見えるのに。
こんなファミレスなんかに来るようには思えないのに。