聖夜の約束
 
 母は元々居なかったし、父は仕事で家に居ないことの方が多かった。

 父は優しい人だった。

 悲しい、けど。

 あたしは、一人で居ることに慣れてしまっていたから。

 だから、今更クリスマスを嫌いになんてなったりしない。

 自分の誕生日を祝って欲しいなんて思わなかった。

 ただ、今年は。

 今年の、今日だけは……。


「……一緒に、居て欲しかったな」


 思わず口にしてしまった本音の所為か、込み上げる感情が、あたしの睫を濡らす。

 こんな街中で泣くなんてどうかしてる。

 慌てて拭って、あたしは走った。
 
 
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