聖夜の約束
『待って、先生!』
あたしは、先生の上着の裾を引っ掴んで止めた。
『華南子?』
『あ、あの……』
不思議そうに、薄茶の瞳が揺れる。
夜風に、アッシュブラウンの髪が揺らぐ。
あたしは、この人が他の誰かと2人で並んで歩くのを見たくないと思った。
あたしは、この人が他の誰かと2人で並んで笑っているのを見たくないと思った。
大勢に囲まれているこの人が、輝いて見えていた。
あたしには、関係の無い人だと思っていた。
それでも。
あたしだけが特別なんじゃないか、といつの間にか思ってしまっていた。
だから――。