想いの先に
プロローグ
辺りがまだ薄暗い中、飛行機から降り立つと、そこはほのかに甘い花の薫りがした。
早朝と言うこともあり、まだ空港内は人が少なく、スーツケースを受け取ると、待たされる事なく入国審査を通り、空港ロビーに行く事が出来た。
ロビーでは、ツアーで来ている旅行客を待ち受ける現地の係員が数人、自分の会社の名前を書いた紙を頭の上に掲げていた。
私はまばらに立っているその人達の中に、背の高い一人を見つけた。
肌は浅黒く、筋肉質な身体。
髪と目は焦げ茶色。
初めて会った時と変わらないその色の瞳は、私を見つけるとグッと大きくなり、そのすぐあとに笑顔と共に見えなくなった。