I ─アイ─


─8歳、終夏─



小学校に通っているあたしと、家で待ってるお母さん。

仕事で別に暮らすお父さん。



好かれていないのは知っていた。

利用されていたのも知っていた。


あたしは両親を結ぶ手錠。


でも家族3人で生きている。

それだけであたしは世界一幸せな家族だと、心から思えた。



だって世界には、ご飯も食べれなくて両親もいない子供が、たくさんいるんだよ。


だから、美味しい食べ物があって、何でも買って貰えるあたしは幸せだ。


それが例え、本当に欲しいものじゃなくても、あたしは幸せな子供だった。



…はずだったのに、



最近知った。

お母さんはお父さんに嫌われたらしい。

つまり、離婚。


うきうきで引っ越したこのオシャレな家も、

本当は、あたし達を追いやる為の場所だったのかもしれない。


最近知った。

お父さんは好きな人が出来たらしい。


前の家で、その人と暮らしているんだって。


お母さんは多分、その事を知っている。

お母さんはいつも悲しそう。



なんだか最近の空気は重い。


台風の影響で空も濁っている。

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