I ─アイ─
嘘が生まれた日
パトカーと救急車の音が鳴り響く。
お母さんの左腕には、たくさんのリストカットの傷跡。
そこから、たくさんの血が流れ出していた。
まだ温かみを持って流れる血は
すごくリアルで、あたしの頭にこびりつく。
何も考える事は出来ず、ただ頭の中は、サイレンがこだましていた。
その時、お父さんがあわてて入って来た。
『奈々っ!!!』
『…お父さん。
なんでここにいるの…?』
『連絡を聞いてね…。』
今まで見たこともないくらい、焦って心配したようなお父さんの顔と声。
……こんな声だったんだ…
忘れていた。お父さんの声を
そしてあたしにお父さんがいた事も。
ほら、まただ。
自分の事に精一杯で…
_____