Ｉ ─ｱｲ─

─高橋 奈々、8歳秋。─



11月16日


お母さんは亡くなった。


原因は……薬物乱用。

そして、窒息死。



もう、動くことは無いと、目覚めることも無いと、

お医者さんが言っていた。


それでも生きていたはずだった。



今、繋いでるお母さんの手は、体温さえ感じない。


もう冷たかった。




あたしは解ったよ。


あぁ、お母さんは死んだんだ。

死ぬほどあたしといるのが、辛かったのか。


そう…
そんなにあたしが憎かったんだ。

あたしは愛されてなんかいなかった。

ずっと逃げたかったんだ。


"あたし"と言う地獄から。



そんなに疲れていたの？

あたしはそんなにお荷物だった？



なぜ？なぜ？なぜ？

頭が現実を理解しきれない。



お母さんはあたしを置いていった。



最後の最後まで親子になれなかったね。


あたしはその背中に追いつくことは出来なかったよ。



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