明日は
「何されるかわからないから、布団をかぶって寝たよ。そしたらずっとしゃべっていた」

「誰と?」

「布団をかぶっていたから、誰と何をしゃべっていたか何て知らない」

「布団って?」

「かけ布団だよ」

 父親は玄関のドアを開け外を見ている。

「どうしたの?」

「ほら、あそこに人が」

 父親は家に入りこんだので、子吉沢は玄関の外に出て見た。

 誰もいない。

「誰もいないよ」

「目の前に人がいるだろう」

 子吉沢は確認のためもう一度見た。やはり誰もいなかった。

「誰もいないよ」

「いるだろう。人が……」

 父親の体は小刻みに震えていた。
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