明日は
「いないよ……」

 電話が鳴った。

 受話器を子吉沢が取った。

『無倖坂病院です』

 と、女性の声だった。

「はい……」

『子吉沢さんのお宅ですよね?』

「はい……」

『お父さんは帰ってきてませんか?』

 子吉沢は黙って父親に受話器を渡した。しかし、父親は手を振って、拒否を示した。

「あの、まだ、帰ってきてないんですけど……」

 子吉沢の言葉は歯切れが悪かった。

『そうですか……それじゃ、帰ってきましたら病院に戻るように伝えてください』

「はい……」

 電話は切れた。

 父親は酔った感じではなかった。
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