明日は
SCENE 4
 子吉沢は墨丘とは接点がなく、席が前後であるが黙っていた。

 美少年で勉強もかなり出来るので、女子からは人気で男子からは、ねたまれていた。

 そんなある日のことである。

 一人で帰る校門の前で、後ろから声がしたので、子吉沢は振り返った。

 墨丘だった。

 相変わらず、墨丘は女子に囲まれているが、浮かない顔をしている。

 子吉沢はうらやましいと思うだけだった。勉強も運動もしゃべることさえも苦手で、ルックスもイマイチなので、女子にモテる要素が何もないのだ。

 せめて明るければ救いがあるかもしれない。父親がしっかり働いていれば状況も違ったはずだ。

 子吉沢が家に戻ると、珍しく父親が起きていた。

 それに酔っていない。

「あれ、起きていたの?」

 子吉沢の質問に父親はうつむいたまま無言だった。

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