拝啓、カミサマ【短編】
ぶらりの話は好きだ。
ただ彼の広大で強靭な思考に常人以下の私の頭はついていかず、自分で話を振っておきながらすぐに息切れをおこす。

よく、

「何故君はそうなる事を承知の上で話を振るかな」

と言って私の視界になだれ込んだ前髪を数束指に絡め指で流れに沿って撫でる。

「ぶらりの解釈する世界は私の救いなのです」


公式のように同じやりとり。
だけど不毛なのに飽く事なく繰り返すやり取りは私にとって必要なものだった。
今もぶらりが私に触れる感触を頭皮や額に感じながら身体がなんとなく軽くなるような心地を感じていた。

日光消毒を施したシーツの香りと、日陰に温度を奪われたひんやりとした感覚が思考を白くしていく。


「寝るの?」


体温の低いぶらりの指が触れて、自分の身体がやたらほてっているかのような錯覚を覚える。
瞼を降ろすのも、ちょっと面倒だ。


「んん…わからない」

「本当に君は、生きるのが億劫そうに生きるね」


なんでそんなに温かい顔をするんだろう。
ぶらりからしたら、制限なんか自分より遥かに少なく、もっと自由に動き回る事が出来るのに、こうして怠惰の限りを尽くしている私なんて、見てるだけで虫酸が走るだろうに。
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