好きな人は初恋から君へ
茜ちゃんの後ろ姿が遠ざかっていく。


「あーあ、結構自信あったのになぁ…」



でも……



あんなに泣かれちゃうとねぇ…




ほんの数分前…


『っ…』


『落ち着いた?』


『うん…ごめんなさい。』


今日は嬉しい事に
茜ちゃんからのお誘いデートだった。


でも…


会った瞬間に号泣され
とりあえず学校前だし、人目につくので近くの喫茶店へと入った。



そして、今に至る。



『何があったの?』


『…』


『あっくん絡み?』



ビクンッ


茜ちゃん分かりやすいなぁ。



『まぁ言いたくないなら良いけどさ、泣いててもなんもなんないでしょ』


ほんの少し意地悪を言ってしまった。


海の言葉に茜の表情も曇る。



だって、ちょっとでも気がある女の子が自分のデート中に他の男の事で泣くなんて嫌でしょ?



『私…』



『うん?』



『すき、なんだ。秋人のこと』



『…うん』

チクンと胸に痛みが走った。


『最初はね、最悪な奴って…思ってたの。』


茜は両目に涙を溜めて
途切れ途切れに話し出す。



海はそれを黙って聞く。


『口だって悪いし…俺様だし…勘違いするし…エロいし…頭いいくせに馬鹿っぽいし…』




『でもね…守ってくれたの。』



泣きながらも
まるで花が綻んだような微笑み。



『わたしが、泣いた時も…困ってた時も…傍にいてくれた』



『これからは、僕が傍にいるって言ったら?』



海の言葉に茜は一瞬
驚きの表情を見せたが直ぐに俯き頭を横に振った。



『だめ、なの。ごめんなさい。今はちゃんとした理由聞かれても…分かんないけど…一緒にいてくれた以前に…理由を考えられないくらい、好きなのっ』





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