背中あわせのふたりは


「伊藤先生」


甘えるような声で卓也を呼ぶのは、今の彼女である、美弥だ。


彼女のことを思い出した後にこの声を聞くと、吐き気がする。


美弥のことが好きで付き合っているわけではない。


むしろ嫌いなのだ。


それなのに付き合っている自分自身に、吐き気がする。


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