背中あわせのふたりは


卓也はどこかで解っていた。


その答が逃げであることを。


それでもそうせずにはいられないほど、怖かった。


彼女と自分との間にある距離が、さらに深くなっていくことが。


冷静になればなるほど、卓也は後悔した。


彼女との距離を縮める努力をすることから逃げ出したことを。


あのとき彼女がどんな返事をしようとも、あの手を放すべきじゃなかった、と。


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