背中あわせのふたりは


彼女に対する攻撃は、卓也と離れたことでさらに悪化した。


廊下や帰り道などで見かけるたびに、彼女はひとりだった。


卒業が迫ってきた頃、それが変わった。


校門の外に停まるスーツ姿の男が運転する黒い車に、彼女が乗り込むのをよく見かけるようになった。


自由登校になった校内で見かける彼女は変わらずひとりだったが。


その車に彼女が乗り込むのところを見るたびに、卓也の中に芽生えたどす黒い感情は大きく膨らんでいった。




──あいつから逃げ出したのは俺の方なのに。




そして卓也は決意した。




──俺も東京に行こう。




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