背中あわせのふたりは


やっと慣れてきた言語が聞こえて、綾香は振り返る。


ブルーグレーの瞳がふたつ、綾香の視線を捕らえる。


『…ダン、どうしたの?』


漆黒の髪を掻き上げて、寂しそうに笑う彼は、きっとよくないことを想像していたのだろう。


背中から抱きしめられて、ほっと息を洩らす彼の腕に、綾香はそっと触れる。


『いなくなるかと思った』


小さく呟く声に、苦笑する。


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