背中あわせのふたりは


『どこにも行かないってば』


『…僕を置いて行くのに?』


…何も言えなかった。


彼を置いて、この街で出逢ったすべての人を置いて、自分の国へ帰るのに。


『…戻ってくる?』


分からなかった。


自分がどこで何をしたいのか。


日本へ帰ると決めたのに。


綾香は、まだ揺れていた。


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