背中あわせのふたりは


「子供の頃からの目標だったの、留学することが」


彼は黙って綾香の話を促す。




──そう言えば、こうやって思い描いていた夢のことを話すのは初めてかも。




「…あのとき、東京に行って何をするんだって訊いたこと、覚えてる?」


今度は綾香が返事を促す。


「…覚えてるよ」


覚えてたんだ、と心の中で言う。


「留学して、大好きな英語を身に付けて、それを生かせる仕事がしたいと思ってたの」


苦い表情をしている彼を、煙草に火を点けながら正面から見る。


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