背中あわせのふたりは


だけど、訊いてみなくなった。


「…あいつから、聞いてなかった?」


あいつ、と綾香が呼ぶのは、幼なじみで彼の友人のことだ。


「…いや」


そう小さく答える彼を見て、やっぱり、と少し落胆した。




──やっぱり、ずっと引きずってたのは、私だけだったか。




煙と一緒にため息に似たものを吐き出す。




自分を呼ぶ声がした。


懐かしくて、温かいその声は、確実に綾香を呼んでいた。


「Ayaka!!」


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