背中あわせのふたりは


「…変わってないのは、お前も一緒だよ」


やっとの思いで卓也がそう言うと、彼女はほんの少しだけ左目を細めた。


注意して見ていないとわからないほど、ほんの一瞬。


昔、何度この癖を見ただろうか。


機嫌を悪くさせるようなことを言った、自分も悪いのだが。


「俺が変わってないなら、お前も変わってないよ。
あの頃も今も、俺がどれだけお前のことを知りたいと思ってるか知らないだろ。
だけどお前は自分のことを話したがらないから、だから俺が我慢してるってこと、知らないだろ」


今度は少し眉根が寄った。


卓也は彼女の癖を少しずつ思い出していた。


今はきっと驚いているのだろう、と。


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