背中あわせのふたりは




──…何があったかは、知っているのに。


──言わなきゃ、いけねぇのに。




直感はそう卓也に訴えているのに、その言葉を口に出せない。


こいつは昔からそうだった、と卓也は思い出す。


彼女は触れられたくないことに関しては、どんなに卓也が問いつめようとも、微笑ってはぐらかすだけで、決して答えようとはしなかった。


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