背中あわせのふたりは


美弥は絶対に"先生"をつけて卓也を呼ぶ。


今まで付き合ってきた女たちにも、卓也は名前では呼ばせなかった。


卓也、と呼ばれるたびに、拒否しつづけてきた。


違う、卓也って呼ぶな、そう言って、何人の女を幻滅させてきただろうか。


求めている声は、もう二度とそう呼んではくれないと、言い聞かせて。


テストを作成する手を止め、温くなったコーヒーに口をつける。


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