背中あわせのふたりは


綾香は衿を合わせ、その中に顔をうずめた。


少し高めのヒールがアスファルトに落ちて、コツ、と鳴る。


ウールのコートですら深秋の夕暮れの寒さを凌ぎきれないのに、薄いストッキングとレザーのブーツがそれを凌げるはずがない。


冷たくなった爪先には、もう感覚がなくなっている。


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