背中あわせのふたりは


「何がおかしいのよ!?」


ヒステリックに叫んだ女の声が、天井の高いロビーに響く。


「…とんだ茶番ね」


綾香の言葉が気に入らなかったらしく、女はまた右手の平を綾香の左頬にぶつけた。


「ひとの旦那に手ぇ出しておいて、何よそれ!?」


「私から誘ったと?」


目の前で泣き喚く女とは反対に、綾香の頭は醒めていく一方だ。


「あんた以外に誰がいるのよ!?」


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