背中あわせのふたりは


「お宅の旦那は、これっぽっちも悪くないとでも?」


はっとした顔で綾香を見たのは、男の方だった。


「貞操罪になるのは、お宅の旦那も一緒だと思うけど?」


男は綾香を見つめたままだ。


「こんなくたびれた男にしがみつきつづけなきゃ生きていけないあなたが可哀相」


もう何も言わなくなった夫婦を残して、綾香は歩き出した。


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