背中あわせのふたりは

Ayaka





──こんなふうになりたかったわけじゃないのに。


──もっと、違う自分になりたかっただけなのに。


──どうして私は、うまく生きられないんだろう。




窓の外に目をやると、薄暗い景色の中で、大粒の雨が降っていた。


不倫がバレて、勢いで退職したものの、綾香にはアテなどなかった。




──こんな不況の時代に、再就職しようなんて思ったって、難しいのはわかり切ってたじゃない。




溜め息が漏れて、昨夜から溜め息しかついていないことに気づいた。


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