背中あわせのふたりは


いつもより軽いメイクをして、いつもよりカジュアルな服を着て、綾香は部屋を出た。


マンションから歩いて数分のコンビニに着くと、高校生のカップルが仲睦まじく雑誌を見ていた。


記憶の中で眠る制服と、そのカップルが着ている制服がダブって見えて、思わず涙が滲んだ。




──私にも、あんな時代はあったのに。


──遥か昔のことに思えるのは、私も歳をとったってことかな?




梅酒の瓶とミネラルウォーターを持って、レジに行く。


パーラメントメンソールをワンカートン頼み、料金を支払う。


財布の中身が寂しいことに気づき、明日にでも銀行にも行こう、と思う。


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