背中あわせのふたりは
早朝から降り出した雨は、卓也の気分をさらに沈めた。
眠れずにいた体をベッドから離し、仕事に行く準備を始めた。
卓也の頭の中を占領する名前を、打ち消すように。
だが、学校に着いてみると、それに失敗したことに気づいた。
──…この場所にいる限り、忘れることなんてできないってわけか。
苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、卓也は諦めた。
彼女を頭の中から追い出すことを。
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