背中あわせのふたりは


卓也の足は、ひとつの教室に向かっていた。


その場所に着くと、ひとつの席に座った。


そして、そこから見える風景をゆっくり確認したあと、職員室へ戻った。


「伊藤センセー」


朝の部活の練習が終わったのか、男子生徒が卓也を呼んでいる。


「どうした?」


男子生徒が卓也のところまで追いつくのを待ってから、尋ねた。


「…ちょっと、彼女のことで相談したいんだけどさ…」


なるほど、言いづらそうにしていた理由はそれかと頷く。


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