背中あわせのふたりは


十日ほど経った頃、帰りに彼が綾香の教室に迎えに来た。


センター試験を目前に控えていた。


窓の外では、牡丹雪が音もなく積もっていこうとしていた。


自習室へふたりで移動すると、彼は話を切り出した。


綾香は仲直りだと思って、ほっと息を吐いた。


だが、違った。


「東京の大学に行って、どうするん?」


綾香はうまく話すことはできなかった。


ただ、曖昧に笑うしか。


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