背中あわせのふたりは
正直、親にすら、自分の未来像を明確に話したことはなかった。
綾香が描く具体的な未来に、もしかすると彼は傷つくかもしれない。
そう思うと、うまく言葉にできなかった。
うまく、伝えられなかった。
「…もういいよ」
しばらくの沈黙の後、彼はそう言った。
「……え……?」
彼は、多分、泣きそうな表情をしていたと思う。
あまりにもショックで、拒まれたことが、シャットアウトされたことが、ショックでよく覚えていない。
だけど、その後に続いた彼の言葉で、綾香の涙腺は完全に壊れた。
「……別れよう」
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