海が呼ぶから
カイと会った当初、ゼオは野生動物のようにカイに牙をむいた。

しかし、カイが言葉を喋れないと知った事(演技ではあるが)と、紙に描いた絵でのコミュニケーションを重ねる内に、徐々に心を許したようだ。

最初、カイは見たことの無い文字を綴っていたが、俺達の公用語とそれがかけ離れている事を知り、絵を描く交流を覚えた。

今は、俺の名前なんかのよく使う単語をいくつか覚え、それも組合せて周囲とのコミュニケーションを取っているようだ。


カイは喋れないという事にしたため、皆が居る前で問い質す訳にもいかず、何だかんだで結局、カイが此処にきた経緯など聞きそびれ、現在に至っていた。

カイには色々、不審な所があった。

ある程度の教養が有るにも関わらず、簡単な単語すら書けなかった事。

また、俺は一応世界を全て巡り、その中で様々なモノを見聞きしてきた訳だが。

カイの描く絵の中には、今まで見たことや聞いた事の無い動物や植物が出てくる。
動物や植物だけならまだしも、未知の建物や文化を、見てきたように描くのだ。

妄想だとしても限界がある。

そして、何より最大の謎は。

この海に…この場所に来た『手段』。
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