海が呼ぶから
03.瞳を開けて

目にうつるもの

波にさらわれたウチは、なすすべも無く気絶した。

逆にそれが良かったのかも知れない。意識があったら、おそらく溺れていた。

海に落ちた後、意識を取り戻し、目を開けると、知らない人と目が合った。

どうやら彼が助けてくれたらしい。

安堵半分、それから…『帰れない』それを本能的に何故か感じ、こらえきれ無かった。
顔を手で覆ったが、指の隙間から涙の欠片が落ちる。

(人前で泣いたこと、今まで無かったのにな…)

ギュッと抱きしめられた彼の腕の中は、とても暖かだった。

彼のマントに包まれて、彼に導かれ歩く先で目に写るのは、海とそれから…ウチが見た事の無いモノばかりで。

また、こらえきれ無かった涙がこぼれ落ちた。
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