それでも君が好き
『村上蒼太』
黒いディスプレイに打ち出された、白い文字。
フォントは堅いゴシック体だった。
わたしは折りたたみ式の携帯を開けると、慣れた手つきでメールの受信箱をチェックする。
【今日は一緒に帰る? 話したいことがある】
絵文字のひとつもついてない、いたってシンプルなメール。
これが、この人…蒼太の、普通なんだけれど。
わたしは親指一本で【分かった。教室で待ってる】とだけ打つと、携帯を閉じた。
文章の最後に、チューリップの絵文字をひとつだけ付けておいた。
このあいだ塗った淡いピンク色のマニキュアが、もう剥がれかけている。
「未羽ー、さっきのメール誰ぇ?」
「ん…蒼太だよ」
「仲いいよねぇ…未羽と蒼太クンって」
呆れたように言う、親友。