それでも君が好き
「あ、いや…ごめん。何でもない」
「そっか」
蒼太は一瞬不思議そうな顔をしたけど、すぐにまたいつものノーテンキな顔に戻った。
全く、蒼太は百面相みたいな人だ。
コロコロコロコロ、日本の季節が移り変わるみたいに、表情を変えていく。
「んじゃ、帰ろうぜ」
「うん」
蒼太は教科書が全く入っていないだろう、軽そうなバッグを持つと、誰も居なくなった教室のドアから出た。
わたしも蒼太のあとを追いかけた。
帰り道、蒼太は子供みたいにバッグをブンブン振り回していた。
「何かいいことでもあったの」
「んーん、別にっ! 未羽と一緒に帰ってるんのが楽しくてなっ」
「………っ」
不意を打たれた感じがして、わたしは一瞬固まってしまった。
どうして蒼太は、恥ずかしいようなセリフをさらっと言っちゃえるんだろう。