それでも君が好き
「うん」
蒼太はじっとあたしの方を見つめている。
わたしは思わず俯く。
答えは出ているはずなのに、言えない。
けれど蒼太に嘘をつく気にもなれない。
わたしは擦れる声を振り絞って言った。
「…誰かは言えないけど……居るよ」
ざり、とコンクリートが擦れる音がする。
足を動かしたのは、わたしじゃなく蒼太だった。
「そっか」
「うん…」
誰かは聞かないでくれて、ありがたかったと思った。
ほっと一息ついたときに、いきなり首が持ち上げられた。
「俺も居るよ、好きな奴」
「へっ…」
目の前に広がっていた景色は、さっきまで地面のコンクリートだったはず。
状況を頭で整理してみた。
ひとつ分かってしまった。
わたしは今、蒼太にキス…されている。