キミの手 キミの体温

わたしは宝珠を裏切ってなんかいない。


わたしはずっと宝珠を想ってきた。



「だったらなんでアイツと付き合ってたんだよっ」


「えっ……」


「……だから嫌いなんだよ。嘘つき」



吐き捨てるなりわたしの手を振りほどき、苦しげに顔を歪めた宝珠は踵を返して背を向ける。



“嘘つき”



違うよ、宝珠……。
わたしはずっと宝珠が好きだった。



遠ざかってく宝珠はそれっきりわたしなんて見ないで、彼女が開けた扉の中へと消えていく。


でも、



“ずっと好きでいるって言った癖に裏切った”



例え宝珠を想っていたとは言え、周助の告白を受け入れたのは紛れも無くわたし……。



それを打ち明けなかったのはやっぱり……宝珠を裏切ったって負い目を感じてたからなのかもしれない。




こんなの、狡くて最低だ。



やっと宝珠に拒まれてた理由がわかった。




こんな最低なわたし、世界で一番嫌われたって仕方ないよ……。




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