キミの手 キミの体温
side宝珠
「宝珠! どうしたのっ?」
玄関で待っていた白奈の不安げな声にも振り返らず、無言で寝室に向かい扉を閉めた。
壁に背を預けたまま薄暗い部屋の床に座り込む。
“ずっと待ってるって約束したのに……”
涙ぐむ瞳で責めるように発した言葉はひどく俺を苛立たせた。
先に約束を破ったのは千愛だ。
去年の今頃。
俺はずっと探していた千愛を見付けた。
母さんが死んでからずっと俺の心を支えてた存在。
恵璃さんに何度も無理矢理犯され、その度に心が
壊れていっても……千愛が居るって思うだけで生きていけた。
それなのに……。
見つけ出した千愛は、アイツと手を繋ぎながらアイツだけに笑いかけていた。